専用カップや治具など、
細かなこだわりでブランドを進化させる
橋本 『Largo』は1997年から開発が始まり、2008年に第1弾が発売された製品です。しかし発売から10年以上経ち、他の業務用レギュラーコーヒー製品との差別化が社内でも分かりづらくなってきて、埋もれてしまう部分がありました。
そこで、2023年に着手した業務用ブランドの整理にともない、フラッグシップである『Largo』に改めて光を当てるべく、リブランディングに取り組むことになりました。
橋本 本来、製品を飲んだことがない人にも魅力が伝わるくらい、ブランドや製品価値はきちんと明文化されているべきです。その上で営業やお取引先、エンドユーザーときちんとコミュニケーションできるのが理想の状態だと思います。
しかし『Largo』はその価値に反して、どうしても「飲んでみたら分かるおいしさ」に頼りがちな傾向にありました。この課題を解決するために、UCC業務用の全製品と比較しながら『Largo』のポジショニングを再整理することから始めました。
宮原 再整理にともない作成したのが、UCC業務用レギュラーコーヒー製品をマッピングする「UCC Professional Brand Lines」です。すべての製品を3つのラインに分け、LUXURYに該当するのは『Largo』のみとしました。
宮原 いろいろと進めているのですが、まずはアクセサリーと治具のお届け方法のリニューアルがあります。アクセサリーとは、『Largo』を購入いただいているお客さまに協賛させていただいている、専用カップやグラスのことです。これをリブランディングにあわせて、『Largo』の特長である香りを口に入れた時に感じやすい形状や厚さ、ラテアートのしやすさにこだわり刷新しました。
また『Largo』のBOTTLE MODELを開栓するための専用治具のお届け方法をブラッシュアップします。今までは、簡素なビニール袋のまま営業がお客さまに手渡していましたが、LUXURYブランドにふさわしい提供方法に変更予定です。具体的にはラグジュアリー感のある箱に開栓治具と、ウェルカムレターや抽出レシピや推奨環境などのご案内も同封してお届けします。
宮原 治具が届く時というのは、お客さまが『Largo』を初めて開栓する瞬間であり、『Largo』の香りを初めて体験する瞬間です。その初めてを、ていねいにお届けしたいという思いがあります。
橋本 あとはLimitedの展開も、LUXURYである『Largo』ならではの取り組みになります。
宮原 『Largo』のブランド価値を伝えるためのプロモーションとして、毎年春に期間・数量を絞って展開する限定缶のことです。2024年版は既存の製品と同じコーヒー豆が入っていますが、来年以降は中身やデザインを毎年変えて、その年だけの限定アイテムとして展開予定です。
今までは『Largo』=フレッシュアロマシステムという認識が社内でも一般的でした。そのため、「BAG MODELはフレッシュアロマシステムを使っていないので、『Largo』ではないのでは」という意見さえありました。
宮原 ブランド価値というのは、製品の機能がすべてではありません。多くのラグジュアリーブランドが素晴らしいのは製品の機能だけではないですし、カスタマーも機能だけで購入を決めるわけではありません。『Largo』もUCCコーヒープロフェッショナルを代表するブランドとして製法に限らない包括的な価値訴求をする、それがリブランディングで目指したことです。
数量限定ということを活かして、遊び心あるチャレンジができればと考えています。その年のトレンドを反映するほかにも、サステナブル原料や水素焙煎も検討したいです。
今はこれらの取り組みを進めていますが、来期以降はより『Largo』の体験価値をお客さまにお届けできる取り組みも考えています。
宮原 正直、『Largo』の認定制度やアクセサリーは、他のブランドでも同様に展開可能です。もっと『Largo』を末永く使っていただける何かがあるといいなと思っています。
たとえば、『Largo』を使っていただいているお客さまのコミュニティです。限定の情報を毎月お届けしたり、認定店向けに有名バリスタのセミナーを開いたり。イタリアに一緒に研修に行くのも面白そうです。単なる知識提供にとどまらず、『Largo』があることでお店の価値向上につながったり、愛着を持っていただけるようなサービス提供を考えています。
目指したのは、
日本ならではのエスプレッソブランド
宮原 実はプロジェクトが始まる当初、『Largo』の言葉の意味すら知りませんでした。このままではリブランディングはもちろん、価値をきちんと伝えることはできないと感じ、立ち上げ当初の思いやブランド名の意味を知るところから始めました。
宮原 “Japan Qualityのエスプレッソ体験”というコンセプトから付けられた名前でした。もともと、エスプレッソはイタリア発祥です。イタリアでのエスプレッソは、Bar(バール)で仕事前やランチ終わりに時間をかけずにクイっと飲む、ちょっとした休息のための飲み物です。
しかし、日本でコーヒーを飲むシーンはイタリアとは少し違います。カフェタイムでの談笑や仕事のお供に飲まれることのほうが多いです。そうした日本ならではのコーヒータイムとして、ゆったりとした雰囲気で楽しんでいただきたいという思いから、音楽用語の「ゆったりと」「悠々と奏でる」という意味がある『Largo』の名前が付けられました。
橋本 エスプレッソといえばイタリアブランドのものが浸透しており、日本発のエスプレッソブランドが世の中にはありませんでした。これだけコーヒー文化のある日本で、日本らしいエスプレッソを作りたいと考えたのが、『Largo』のはじまりのひとつでもあったのです。
宮原 『Largo』のロゴも筆で書いた楷書体ですが、これはJapan Qualityのエスプレッソと紐付くイメージになっています。また、なぜ開発に10年もかけて香りと鮮度を閉じ込める世界初の製法であるフレッシュアロマシステムが生まれたのかも、今まではお伝えしきれていませんでした。ここにも、立ち上げ当時の香りに対する強い思いがあります。
宮原 開発当時から、お客さまが最もコーヒーに求めるものは、香りであることが分かっていました。ドリップで落とすよりもクレマがあるエスプレッソで提供したほうが香りが維持できることもあり、日本発のエスプレッソブランドは香りを大切にして開発されたのです。
業務用ブランドだからこそ叶う、
お客さまとの共創
宮原 『Largo』の公式サイトにもあるのですが、co-creation(共創)は大切なテーマのひとつとして進めました。『Largo』のメインターゲットはイタリアンやフレンチレストランなど、単価の高い食事やサービスを提供している店舗です。そういったお店は、主軸となる食事に注力するためコーヒーに時間をかけられない、という課題をお持ちではないかと感じています。
ただ、パンデミックを経て家庭内でおいしいコーヒーが飲めるようになってきた昨今、飲食店でのコーヒーは、家庭では体験できないものである必要が強まってきました。『Largo』はおいしいコーヒー豆を提供するだけではなく、技術や提供方法までサポートをすることで満足度向上や、外食ならではのコーヒーのクオリティサポートまでできるブランドとしてco-creation(共創)を掲げています。
橋本 1杯のコーヒーを提供するまでには、コーヒー豆を栽培・収穫して焙煎し、パッケージングしてお届け、そこからお店でコーヒーを淹れてお客さまへサービスするという一連の流れがあります。にも関わらず、私たちはその過程の半分までしか関わることはありません。我々は製品を提供した先のビジネスまでに責任を持ち、サポートしていきたい。それが『Largo』の他との大きな差別化ポイントであるべきだと思っています。
宮原 たとえば『Largo』を取り扱うお店のシェフオーナーであれば、サービススタッフの方に認定制度を活用してコーヒーの知識と技術を磨くことができる。そうするとシェフは料理を作ることに集中できます。コーヒーは『Largo』に任せていただく、そんなイメージが理想です。
橋本 Largo Experience Roomに来ていただければ、相性のよいコーヒーマシーンを2つ、実際に使用しながら、我々が考える理想の抽出をお伝えすることもできます。ここまでサポートしているブランドはあまりないのではないでしょうか。
『Largo』は製品にとどまらない、その周辺サービスも含めて価値提供していくブランドとして、これからもお客さまに寄り添っていきたいと考えています。