目的ではなく「手段」に。
人生のワンシーンに寄り添う料理を
自分の店を持つとなったとき、まず抱いたのが「食事を目的ではなく手段としてほしい」という思いでした。久しぶりに会う友人とのひと時、家族の誕生日、愛する人へのプロポーズ。そんなシーンを共にするレストランでありたい。オープン以来、その気持ちは変わらず胸の中にあります。
誕生祝いや記念日などで利用されるお客さまが多くいらっしゃいます。意外だったのは、ご年配のお客さまに支持いただいていることです。ランチタイムは仕事の合間にいらっしゃる若い方も多いですが、ディナーはさまざまな年代の方に利用いただいています。
そうですね。普段はご夫婦でいらっしゃる方が、ご家族が帰省されたタイミングで利用されることもあります。「自分たちがいつも通っているところだから」と、久しぶりの家族との団らんの場に選んでくださる。それはとてもうれしいことだと感じています。
そうしてアットホームな空気が流れることもあれば、カップルが大切なひと時を過ごすこともある。誰もが大切にする時間に寄り添える料理、レストランでありたいと今も考え続けています。
自家菜園で育った野菜、
地元食材を季節の一皿に
料理には地元産の「おかやま有機無農薬農産物(※)」に認定された野菜を使用しています。土づくりの段階から化学肥料や農薬不使用で育てられた野菜です。
食材の一部には、父が自家菜園で育てた野菜も使用しており、こちらも化学的な農薬や肥料に頼らず育てられたものです。父は店のオープンにあわせ、野菜づくりの知識がまったくない状態から畑仕事を始めてくれました。
父の畑は、ジャガイモやタマネギのようなメジャーなものから珍しいものまで、少量多品種の野菜たちが育つ場所です。市場に出回らないような野菜は、私が種を買って栽培をお願いすることもあります。
※「おかやま有機無農薬農産物」有機JAS規格を満たした上で、更に厳しい化学肥料や農薬(天敵を除く)を一切使わない独自の規格を設け、岡山県が認証した農産物。
そうですね。たとえば今日のランチで使用している黄色いビーツや赤タマネギも自家菜園で育ったものです。ビーツはレーズンとビネガーを加え、甘酸っぱい味わいに仕上げています。
野菜の盛り合わせの内容は、あくまでも仕入れや収穫のタイミング次第。その時々の旬の味わいを楽しんでいただければと思っています。
イカやタコなどは岡山県産のものを使うことが多いですね。今日のメインに使っている豚、「豚珍甘」(とんちんかん)も岡山県の美星町で飼育されたものです。
ありがとうございます。なるべく地元の食材を使いたくて、パスタも岡山に古くからある製麺所から仕入れています。ただ、地元産だからという理由だけで選んでいるわけではなく、味や品質に納得したうえで料理に取り入れています。
当初は地元のものを地元の方に楽しんでいただければと思っていましたが、実際は県外からのお客さまもいらっしゃり驚いています。みなさん、ここなら岡山のおいしい野菜が食べられると楽しみにしてくださっているようです。
ディナーでは複数の野菜をバーニャカウダでご提供しています。色も食感も違う野菜たちが一皿に並ぶことで、これはなんという野菜だろうと会話のきっかけにもなるのではと思って。
食材にこだわることで、こちらも「両親が育てた野菜です」「おかやま有機無農薬農産物に認定された野菜なんです」とお客さまにお伝えできる。食材1つひとつのストーリーについてお話できることを、自分自身とてもうれしく感じています。
よりおいしい一杯を。
料理とコーヒーが奏でる豊かな時間
堀尾 大介さん(以下敬称略) 正直、それまでのコーヒーに不満があったわけではないんです。お客さまにも好評でしたし、コーヒーが好きな私としても自信を持ってお出ししていました。
ただ「とにかく1回試してみてください」と紹介された『Largo』がすごくおいしかった。 オープン当初から使っていたコーヒーを変えたいと思わせる香り、味の安定感に魅力を感じたんです。
堀尾 愛弓さん(以下敬称略) 私もシェフと同じ感想でした。『Largo』はとにかく開栓したときの香りが際立っていて。実際に淹れたコーヒーは、おいしさに華やかさがプラスされた印象でした。
堀尾(愛) お客さまも『Largo』の味わいを気に入ってくださっています。喜んでいただいたり、褒めていただいたりするとうれしくて、「そうなんです。今まで以上においしいでしょう?実は『Largo』なんですよ」ってお伝えしたくなってしまうほどです。
シェフと同じく私自身もコーヒーが大好きで、お客さまにもおいしいコーヒーをお出ししたいと考えています。当店はカフェではなくイタリアンですが、それでも仕事の合間に、食後に、大切な人との会話に、おいしいコーヒーが存在することはきっと大切なはず。料理と過ごしたあとの余韻にもコーヒーのおいしさが関係すると感じています。
堀尾(愛) 最近はお客さまからのリクエストもあり、アメリカーノをアイスでおいしく提供する研究を重ねています。抽出量や水の量を変え試行錯誤するなか、グラスで味わいが大きく変化することを発見しました。
うすはりの口の広いグラスに注ぐことでコーヒーの香りが広がり、かつすっきりとしたおいしさも感じられる。そういったアレンジを検討できるのも、『Largo』の豊かな香りと味があってこそと感じています。
安定したクオリティをもつ『Largo』なら、いつか自分以外のスタッフがコーヒーを淹れるときがきても、変わらぬおいしさをお客さまに提供できる。お店のコーヒーを『Largo』に変えたことで、ステップアップできる機会を得た思いです。
堀尾(大) そうですね。イタリア生活で私が感じたのは、とにかくイタリア人にとってコーヒーは身近な存在だということ。仕事前、仕事途中、食事後のたびにカフェに行き、休憩時間にはバルに足を運んで、エスプレッソを楽しんでいました。1日に何杯飲むの?と驚いてしまうほどです。
飲むときは小さなカップに砂糖をたっぷりと入れ、最後は底に沈んだ砂糖をスプーンですくって楽しむんです。大の大人がそれはもう、うれしそうに。
私もその中にいたので、お客さまにもそんなふうに、私たちが新しく出会った『Largo』の魅力を通してコーヒーを身近に感じてほしいという気持ちが常にあります。
岡山の食材とワイン、そしておいしいコーヒー。これらと共に、これからもお客さまにとって大切な時間を提供できればと思います。