香りと鮮度を守る
「フレッシュアロマシステム」

井上 「フレッシュアロマシステム」という、コーヒー豆の香りと鮮度を最大限に引き出し保つためのUCCグループの独自技術です。このシステムは、「アロマフリージング製法」と、「特殊アルミ缶による包装」というふたつの技術から成り立っています。
井上 「アロマフリージング製法」は、焙煎直後のコーヒー豆を冷却し、香り高いコーヒーを実現する独自技術です。一般的な製法では、外気を取り入れて吹きかけることで熱を奪う方法をとります。
これに対して「アロマフリージング製法」は、焙煎直後のコーヒー豆をマイナス2℃の冷気で急速冷却し、香りを含んだ冷気が循環してコーヒー豆を冷やすことによって焙煎したての香りをコーヒー豆の内部に閉じ込めます。
井上 高品質で厳選されたアラビカ種を100%使用しており、アラビカ種特有の華やかな香りやまろやかな酸味などが楽しめる産地のコーヒー豆となっています。『Largo』には「オーセンティックロースト」と「ダークロースト」という2つの製品があるので、それぞれの製品特性にあわせて最適な焙煎度を設定し、異なる味わいをお楽しみいただけるようにしています。

井上 焙煎直後のコーヒー豆をアルミの特殊缶に充填し、豆から排出されるガス圧と、容器内のガス圧による平衡圧(へいこうあつ)を保つことで、香りと鮮度をキープできる技術です。
容器内の平衡圧を保つことでコーヒー豆から出る炭酸ガスがコーヒー豆に戻っていくという現象が起きます。コーヒー豆には脂質(コーヒーオイル)が含まれているのですが、この過程で炭酸ガスに含まれる香り成分がこのオイルに吸着し、アロマオイルを形成するのです。このように『Largo』の場合は完全密封し平衡圧を保つことでアロマオイルを形成し、より香り高いコーヒーを新鮮な状態でキープできるようになります(※)。
※BOTTLE MODELのみに採用されている製法です。

井上 はい、コーヒー豆から発生するガスによって缶内には相当な圧力がかかります。製品設計や保管環境にもよりますが、乗用車のタイヤ空気圧程度の圧力になる場合もあります。その圧力を安定的に保ちながら製品として安全性と品質を確保することが、開発当時の大きな課題でした。輸送時の衝撃なども考慮して、缶の形状や素材の検討など試行錯誤を重ねた結果、確立できた技術だと思います。
良質なコーヒーオイルから、
1杯の香りが完成するまで

土井 香りがとても豊かだと思います。エスプレッソ抽出時に、クレマという泡の層がしっかりと出来上がるのも魅力です。
井上上質なクレマには、酸化していない新鮮なコーヒーオイルと炭酸ガスが欠かせません。「フレッシュアロマシステム」によって豊富に形成されたアロマオイルを鮮度が高い状態で保存することで厚みのあるクレマができ、コーヒーの風味や香りをカップの中に閉じ込められるんです。
土井 はい、クレマはエスプレッソの品質を大きく左右する要素のひとつです。フレッシュアロマシステムによって形成された厚み・きめ細かさのあるクレマが、コーヒーの風味や質感・アフターテイストというおいしいエスプレッソの味わいに大きく影響します。
たとえばパスタも、オリーブオイルに絡ませないとパサパサする、絡ませるとツルツルするといった食感の違いが生まれ、さらにオリーブの香りの余韻をより楽しめます。それと同じで、適切な乳化によって生まれたエスプレッソは、滑らかな心地よい食感と豊かな香りの余韻を実現することができるのです。

土井 『Largo』のポテンシャルを引き出すためにも、クレマを厚くつくり香りを閉じ込めるとともに、香りの余韻を消さないよう雑味やえぐみのない、きれいな液体をつくることをバリスタとして心がけています。
土井 レシピと抽出時間が大切です。粉とお湯の比率が適切でないと、乳化が不十分になりますし、抽出時間が長くなると、雑味が多くなった液体になってしまいます。そのために、コーヒー豆の粒度調整が非常に重要となります。
また、きれいな液体を抽出する上で、ドーシング(粉を入れる作業)、レベリング(粉をならす作業)、タンピング(乳化を促す作業)という3つの作業が重要です。これらの工程をいかに一貫性をもって、上記レシピや抽出時間を適切にする粒度調整を行えるかが、雑味のない味わいのエスプレッソを実現することが可能となります。
バリスタが表現する『Largo』の真価

土井 我々バリスタは、コーヒー豆の特長を知り1杯のコーヒーにする表現者です。香りを閉じ込めた『Largo』の魅力をいかに液体に移してあげられるかは、バリスタとしての醍醐味でもあります。
また個人的には、音楽用語で「ゆったりと」「悠々と奏でる」意味をもつ『Largo』という名前と、日本らしい筆文字のロゴにも共感しながら抽出しています。
“Japan Qualityのエスプレッソ体験”を目指してつくられた『Largo』は、エスプレッソの本場イタリアの仕事前などにクイッと飲むスタイルとは違う、日本ならではのゆったりとしたカフェタイムや仕事のお供に飲むコーヒーとして誕生しました。そういったコンセプトを踏まえて、香りをゆったり楽しんでいただけるような抽出ができたらという思いがあります。
土井 UCCコーヒーアカデミーの専任講師が技術指導を行い、基準を満たすと認定証を店舗に掲示いただける「The Great Barista of Largo」という認定制度です。最も難易度の低いブロンズランクの研修動画を観ていただくだけでも違いはありますし、ゴールドランクまで進むと、さきほどお伝えしたようなクレマの厚みと雑味のない抽出技術が身につくようになっています。
土井 また、こういったサポートを含めた『Largo』の魅力を知っていただくために、東京・青山のUCCグループショールームに「Largo Experience Room」というスペースもご用意しています。導入を検討いただいているお客さまに、『Largo』の世界観とコーヒーをご体験いただける場です。

土井 コーヒーを淹れる前の、BOTTLE MODELの開栓です。BOTTLEを開けると『Largo』の香りが一気に広がり、みなさまに感動していただけます。
井上 開栓時の香りは、「フレッシュアロマシステム」の技術が体現される瞬間です。缶の中で凝縮された香りが一気に広がる。この体験こそが、『Largo』の醍醐味のひとつです。

土井 ほかにもコーヒーの抽出や提供方法のご相談から、水の硬度など技術的な話まで深まることもあります。認定制度やアレンジメニューに興味をもっていただく場合も多く、この空間で『Largo』にまつわるさまざまなご提案ができています。お店ごとの価値観やオペレーションは異なりますから、状況にあわせた最適なご提案をしつつ『Largo』の魅力を最大限引き出せたらと思っています。